親子だって人間関係、愛を伝える練習と努力とは【親子のための心理講座主催 あすかさん後編】

前編では、子育てもキャリアも楽しむ4兄弟の母あすかさんの生い立ちや、実母とのエピソード、3人育児に不安になって泣いた日、そこから見つけた彼女の子育ての軸を伺いました。この後編では、良好な親子関係の築き方、キャリアと子育てのバランス、あすかさんの子育て講座“This is us”に込めた想い、今後の挑戦を聞きました。

あすか

親子のための心理講座主催/ 嗅覚反応分析士 / 社会保険労務士

4兄弟の子育て経験、長年の心理学の学びを活かし“自分のやりたい+家族のしあわせも両方叶えたい人“をサポート。香りを使った体質診断(嗅覚反応分析)で家族の健康を支える活動も行う。

愛することは練習と努力が必要

あすかさんは、2024年現在、小5、小4、小2、1歳の男の子を育てる母だ。彼女は子どもとコミュニケーションをとる上で、親子であっても人間関係であることが大前提だと語る。

「親子と言っても『初めまして』から関係は始まるので、最初からうまくいかないことだってあります。子どもは体がまんまるなように、感受性もまんまるです。そこに、親が思考優位な直線的な関わり方をしたら、フィットしないですよね。いくらお互いに大好きが根底にあったとしても、良いコミュニケーションが築けないこともあります」

親の目線と、子どもの目線。そのどちらの視点も持つことが良好な親子関係を築くヒントになりそうだ。

「私は親子を上下関係ではなく、対等な人間同士の関係、フラットな立場だと捉えています。そうやって関わると、子どもから学ぶこと、気付かされることも多いです。子どもの頃のまんまるな感性も呼び覚まされて、より子どもに寄り添うことができて、お互いに心地よく過ごせていますね」

また、あすかさんの価値観に大きく影響を与えた本がある。ドイツの精神分析学者のエーリッヒ・フロムによる名著「愛するということ」だ。原題は“The Art of Loving”で、この“Art”は芸術ではなく技術という意味合いで使われている。フロムは、愛とは感情ではなく技術だと主張する。(出典:「愛するということ」エーリッヒ・フロム)

「愛することは技術だと直訳すると、かたい感じがしますよね。でも、まさに私が経験し、考えてきたことと同じです。親子であっても伝える努力をしなければ愛は伝わらないと思います。長男には伝わっても、次男には同じ言い方では伝わらないこともあります。その伝え方を学んで練習していくことが大切だと思いますね」

技術はすぐに身につくものではない。何度も練習して身につけていくものだ。また、知っているだけでは技術とは言えない。例えば伝統工芸品を作る職人を想像してもらいたい。彼らは知識もあるが、実践を繰り返し熟練された技を身につける。

育児書を読んでも、愛する技術は簡単に身につかない。職人が自分の手で確かめていくように、それぞれの親子で何度も試みることだ。

そして、愛が練習と努力で身につけることができるというのは希望でもある。親が生まれ育った環境で愛を知らない場合でも、本人次第で後天的に獲得できるということだ。

働くと育てるのバランス

あすかさんは母親になって約10年間、子どもに愛を伝える方法をさまざまな角度から試みている。ひとつは、子どもの心理を理解する直接的なアプローチ。さらに子どもに余裕を持って対応できる母でいるためには、自分の心と体が元気でなければならないと気づいた。間接的なアプローチとして、自身のコンディションをととのえるためにヨガやアロマ、東洋医学などを生活に取り入れてきた。

「子どもがたくさんいて、どうやって学んで生活に取り入れてきたの?24時間どうなっているの?」と疑問が湧く方も多いだろう。あすかさん流の、子育てをしながら関心があることに時間を割く方法は仕事にしてしまうことだ。三男の育児休業からの復職後は本業の社労士を続けながら、ヨガ講師やアロマを使った嗅覚反応分析士の仕事も並行して行った。

「お母さんが幸せであることは、子どもの幸せにも直結します。お母さんも子どももやりたいように楽しんで、お母さんも自分が大切だと思うことを大切にして生きていけるといいなと思っています」

2023年に四男を出産したあとの彼女は前述の言葉通り、自分のやりたいことと、家族の幸せを対立させず、調和させた。

彼女は四男を出産前まではヨガスタジオでヨガ講師としても活動していたが、子どもたちの体調不良や、当時小学1年生になった三男にすぐに寄り添えるようにヨガ講師としての仕事は手放した。社労士と嗅覚反応分析士の仕事は在宅で、オンラインで完結するようにした。自身のキャリアも実現しながら、小学生の子どもたちに笑顔で「おかえり」が言える働き方を叶えている。

“This is us”に込めた想い

かろやかに子育ても、仕事も笑顔で向き合うあすかさん。その姿を見て、周りから「あすかさんみたいな子育てがしたい」、「あすかさんみたいに子育てと仕事を両立させたい」と言われることが多くなったと言う。

周囲からの声と、彼女の中でも子育てに関することを伝えたいという想いが重なり、“This is us”という対話を大切にした子育て講座をスタートさせた。

講座の前半では、子どもとの関わりで知っておきたい原理原則を学んでいく。具体的には、子どもの心理や、子どもとの向き合い方、親の心理、自己肯定感、NVC(非暴力コミュニケーション)などだ。心理学の概念も受講者が腑に落として日常生活で活かせるように、1人1人にペースを合わせ噛み砕いて伝えていく。

後半では、自分が大切にしたい軸、子どもに願うことを考える。講座は6ヶ月に渡る。その間、実際の子どもとの関わりで、受講者が学びを実践し、うまくいかなかったことを一緒に紐解いたり、うまくいったことを深掘りして考えたりする。それぞれの親子なりの心地よい在り方、「これが私たち!=“This is us”」と思える在り方を模索していく。

「子育ての軸を作ることは、結局は自分の軸を作っていくことなんですよね。自分は何を大切にしたいのか、子どもとどういう関係でありたいのか、これらをひたすら深掘りしていくことに伴走させていただけるのは、とてもありがたいですし、幸せなことですね」

講座では対話を大切にしていると語る。

「お母さんたちは『すべき』、『やらねば』に縛られていることが多いです。育児書だったり、自分がされてきた子育てだったり、義両親の声だったり。でも自分ではなかなかそこに気づけないものです。ママ友はそこまで踏み込んで指摘してくれないですからね。そこに、『それって思い込みじゃない?こんな考え方もあるよ?』と外から石を投げ入れてくれる人の存在は大事だと思っています」

講座が6ヶ月と長期間に設定しているのにも理由がある。

「6ヶ月もあれば、学校の長期休みを挟んだり、生活スタイルが変わったりと、お母さんが壁にぶち当たることもあると思います。リアルな困った場でサポートしたいと考えています。また、人の価値観、考え方はすぐには変わらないものです。何度も言われることで納得感が出て、考え方が変わり、言動が変わると思っています」

あすかさんは目の前の人を全力で信じて寄り添ってくれる。

「お母さんがドカンと怒る日があっても『そういう日もあるさ』と思っています。『やってしまった』と自分を責めなくても大丈夫。怒りだって、子どもを愛しているからこその感情です。いくらでも関係は修復していけます。お母さんにも、ぶれても戻れる力を身に着けてほしいと思っています。その人がその人らしく子育てを楽しめて、子どもをそのままに愛するお手伝いができたらと思って取り組んでいますね」

働く母にとって、子育てと仕事の両立は答えの出ない永遠のテーマに思えるが、彼女の中では結論が出ている。

「ワーキングマザーは、ワーキングの部分より子育ての軸をととのえることが先だと考えてます。特に起業しているお母さんは、子育てと仕事の両輪があったときに、まず仕事の方をなんとかしようとしがち。仕事が軌道に乗ったら、たっぷり子どもとの時間を確保しようと考える人も多いと思いますが、そうしてしまうと、お母さんも子どもも苦しい時間が長く続きます。子どもに笑顔で『おかえり』を言いたくて起業したのに、実際はパソコンに向かって『おかえり』とつぶやいている……なんてことも。」

「子どもと一緒に過ごせる時間は限られていて、子どもはあっという間に成長していきます。子どもとの向き合い方の軸を定めておくと、仕事でも、その他のことでも両立しやすくなりますよ」

関西大学社会学部の保田時男教授によると、我が子と生涯で一緒に過ごせる時間は、母親で約7年6ヶ月だそうだ。それは小学校を卒業する時点で約半分が過ぎているとされる。(出典:NHK「チコちゃんに叱られる!」2018年7月29日放送)

誰にも時間を戻すことはできない。胸にドキリとした感覚があった方はぜひあすかさんの話を聞いてほしい。あすかさんに伴走してもらう半年間はきっと人生が変わる半年になることだろう。

心の安全基地を作る あすかさんの今後の挑戦

子育て講座“This is us”で、子どもとの関わり方、自分の生き方に真剣に向き合うお母さんを増やしていきたいと語るあすかさん。彼女にはこれからの人生で成し遂げたいことが他にもあると言う。

「保育園の園長先生になりたいと思ってます。これは、子どもの頃からずっと考えている夢ですね」

彼女は、保育園時代に父の転勤で沖縄に住んでいた。沖縄の園でのびのびと過ごしたこと、あたたかい眼差しで見守ってくれた園長先生の姿を今でも覚えているそうだ。

「子どもには自分を育てる力が備わっているという考えのモンテッソーリ教育で、子どもを尊重してくれる園でしたね。いつでも園長先生の部屋に行ってよくて、園長先生と話してもいいし、話さなくてもいいとされていました。『好きなだけ、好きなように過ごしていいんだよ』と見守ってくれましたね」

また今あすかさんの子どもたちが通う保育園からも学ぶことがあると言う。子どもたちは100人の子どもがいれば、それぞれ100通りの個性があるという考えのレッジョ・エミリア教育の園に通っている。

「レッジョ・エミリアでは、1日のタイムスケジュールや園のイベントなど決められたものがなく、大人から『これをしなさい』というものがほぼないですね。子どもたちは、みんな楽しそうにのびのびと育っています」

彼女はシュタイナー教育にも興味を持ち、講座も受けている。

「保育士の資格も持っていますが、現場の保育士になりたいわけではなく、子どもにとっても、お母さんたちにとっても、安全安心な場を作りたいんです。雇われた園長先生ではなく、自分で園を作りたいので、今の活動と並行して教育、保育の学びも進めています」

また、企業での人事や社労士の経験も活かせると考えていると語る。

「保育の現場の給与水準や働く環境にも課題があると感じています。人事や社労士として働く人の課題を解決しサポートしてきた背景も活かし、働く人も尊重し安心できる場にしたいですね」

あすかさんと話していると、彼女の視座の高さに驚くばかりだ。彼女の情熱と行動力があれば、夢を夢で終わらせず、実現する日もそう遠くないだろう。

あすか

親子のための心理講座主催/ 嗅覚反応分析士 / 社会保険労務士

4兄弟の子育て経験、長年の心理学の学びを活かし“自分のやりたい+家族のしあわせも両方叶えたい人“をサポート。香りを使った体質診断(嗅覚反応分析)で家族の健康を支える活動も行う。

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編集後記

あすかさんと筆者は人事畑出身でバックグラウンドが似ています。雑談で、人事の仕事の中でも何に面白さを感じていたか聞いてみました。彼女は採用面接だと言い、面接者の履歴書に書いてある以上のことをいかに引き出すかにやりがいがあったと話してくれました。きっと子育て講座“This is us”でも受講者の言葉の奥にある想いにも耳を傾けて、いろいろ引き出してくれるのだろうと想像しました。

あすかさんは聡明でパワフルな女性ですが、アニメに詳しいなどの意外性やおちゃめな一面もあります。話すと笑いが絶えなくて、盛り上がること間違いなしです。大事なエッセンスがぎゅぎゅっと濃縮されたあすかさんとの半年間の子育て講座、忘れられない半年になるだろうと感じます。ママ友とメンターの中間のような、親近感があって何でも話せるけれど、適切な知識を与えてくれる人として伴走してくれることでしょう。

ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。(執筆者:江川ともよ)


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