強さとは何だろうか。悲しみや苦しさをバネに頑張ることだろうか。
これは1つのアプローチだろう。
苦しさや辛さも、楽しさも喜びも、優劣をつけずにまるごと引き受けて愛すること。これもまた1つの強さのかたちだ。
なにが正解か、答えがあるものではない。ただ、後者の方が隣の人と手をとり合って笑い、泣けることが多い人生のように思う。
今回ご紹介するのは大阪府箕面市でエアリアルヨガスタジオを運営し、自らもヨガインストラクターとして活躍するKeicoさんです。愛と強さを感じさせてくれたヨガインストラクターKeicoさんのSTORY、ぜひ最後までお読みください。
Keico
経絡エアリアルヨガインストラクター/ 数秘鑑定士
ヨガ指導歴は15年を過ぎ、これまで1500名以上にヨガのレッスンを届けてきた。大阪府の箕面市でエアリアルヨガスタジオYoga Biyoriを運営している。
毎日喜びを感じて生きていきたい
「朝、今日という日が楽しみだな!ってワクワクして、1日の終わりには今日が終わっちゃうの寂しい、とっても楽しかったな〜!と感謝して眠りに付きたい」
ヨガインストラクターのKeicoさんが、オーストラリアのフレーザー島という美しい無人島でのヨガ・リトリートの中で、決意したことだ。(リトリートとは日常から離れて遠くにこもり、深く内省することを意味する)
「日本に帰ってからも、その気持ちを忘れずに毎日を大切に過ごしたい」その想いは今も彼女の中心にあり続ける。
Keicoさんは、“お客様のその先の周りの家族の皆さまにも、笑顔が溢れるように”をモットーにエアリアルヨガを伝えている。エアリアルヨガとは、ハンモックに体を委ねながら行うヨガだ。 彼女のスタジオは、赤ちゃん連れで通えるレッスンや、小学生向けのキッズ向けレッスンもある。赤ちゃんからシニアまで多くの人が通う地元の人に愛されるパワースポットのような存在だ。
Keicoさんは屈託のない笑顔が印象的で、気さくで親しみやすい。彼女の持つ太陽のような明るさ、圧倒的なポジティブなエネルギーに触れたくて、通っている生徒さんも多くいることだろう。そのエネルギーは一体どこから来るのだろうか。彼女の人生を紐解いていこう。
決して平坦な道ではなかった
Yoga Biyoriというスタジオ名は、”晴れの日も雨の日も、気分が良い時も悪い時も、すべてに意味があり毎日がヨガ日和”ということに由来する。
Keicoさんはよく笑い、感動屋さんで涙もろい。きっと子どもの頃から周りの人に愛されてまっすぐに育ったのだろうと想像させる。しかし彼女のこれまでの道のりは想像とはちょっと違っていた。
Keicoさんは、1982年に大阪府に生まれた。姉と妹がいる3姉妹で育つ。彼女が小学生高学年になると、父親は単身赴任となる。単身赴任になってからの父親は、家に帰ってくるのは年に2〜3回だ。父親の単身赴任が始まった頃、Keicoさんの母親は3姉妹を育て家を守り、気丈に振る舞っていた。
しかし、母親の負担も大きかったのだろう。Keicoさんの母親はバランスを保てなくなり、世間一般で言われる“母性”を発揮するのがだんだん困難になっていく。それはほぼ姉妹3人での生活だった。必死だった。
父親が単身赴任先から帰ってくる時は母親も食卓に揃い、何事もない様子を装った。「子どもながらに、お父さんには、お母さんのことを相談できなかった」と語る。
小学生高学年、中学生、高校生と多感な時期に両親に頼り、甘えることができなかった。例えば、誕生日ケーキに年齢の数のろうそくを立てて家族でお祝いする、バレンタインに好きな子にあげるチョコレートを母親と手作りする……Keicoさんにはそういった思い出がない。寂しさや、悲しみはなかったのだろうか。
「寂しさよりも、とにかく生きることに必死だった。寂しいを通り過ぎて“無”の感情でしたね」と当時を振り返る。
ブライダルスタイリストとしての夢を叶えるが……
人よりも大人にならざるを得ない環境で学生時代を過ごしたKeicoさんだったが、光を失わなかった。ブライダルの仕事につきたいという夢があったのだ。
彼女はアルバイトで学費を貯めて専門学校へ進む。弱音を吐かず、周りに甘えずコツコツと努力をした。念願叶って、ブライダルスタイリストとしての仕事をスタートする。ブライダルスタイリストは、新郎新婦が結婚式で身につける衣装、小物、それらに似合う髪型などをコーディネートする仕事だ。
人生の節目に立ち会うことは大きな喜びである。しかし、お客様の大事な場面で失敗は許されない。常に緊張感がある職業だ。Keicoさんは持ち前のひたむきさで、4年で主任の立場まで経験した。上の立場になれば、その分責任も重くなる。土曜、日曜は必ず婚礼があるので朝から晩まで働いた。平日に休みはあったが、職場からの電話が鳴り止まなかった。また職場内の人間関係を円滑に進めるためのコネや根回しが必要になる場面も……。
憧れて入った業界だったが、常にプレッシャーやストレスにさらされ、彼女の心は次第にすり減らされていく。ストレス解消に暴飲暴食に走った。
「当時は朝起きると毎日憂鬱で体もだるくて重かったです。ほぼ毎朝、仕事辞めたいって思ってました。自分はどうなったっていいって、自分を大切にすることなんて考えてもいなかったですね」と振り返る。今のKeicoさんからは想像ができない。
彼女は「このままではダメだ」と思い、2005年ダイエット目的でホットヨガを始める。それがヨガとの出会いだった。
ヨガインストラクター資格取得後オーディションに落ち続けた
それまで何事も3日坊主だったと言うKeicoさん。しかしヨガは不思議と続いた。忙しい仕事の合間をぬって週に2〜5回スタジオに通い、ヨガの世界にどんどん惹かれていく。
「わたしは一生ヨガをし続けると感じました。だから仕事を辞めてもっとヨガを学ぼうと思いました」そうして2009年カナダ、バンクーバーにて全米ヨガアライアンスRYT200を取得した。日本に帰国後、ヨガスタジオやスポーツジムを10店舗ほどオーディションを受けるも、なんと全滅。
「諦めようかとへこんでいるときに、とあるスポーツジムから電話が来たんです。『キッズのスイミングコーチもしてくれるなら、ヨガのレッスンしていいよ』って言ってくれて。『なんでもやります!』って答えましたね」
こうして彼女のヨガインストラクターとしての道が始まった。そこから人とのご縁を大切にし、様々な場所でヨガを伝えていくようになる。
人生が変わったオーストラリアでのヨガリトリート
Keicoさんはヨガインストラクターとして経験を重ね、自身もさまざまなヨガの流派、スタイルを学び続けた。そんな中、彼女の価値観を大きく揺さぶる出来事があった。
この記事の冒頭にも書いた8日間にわたるオーストラリアのフレーザー島でのヨガ・リトリートだ。フレーザー島は、ほとんどが白い砂で形成され、“世界最大の砂の島”と言われる。ほぼ全域がグレート・サンディ国立公園として自然保護区に指定されており、白い砂浜、青い海、豊かな森や湖、湿地など美しい自然が広がる。
美しい環境で、信頼できる先生や仲間たちとヨガや瞑想をし、Keicoさんは心がどんどんやわらかく解放されていくのを感じた。
泣けなかった子ども時代の涙が時を経て流れた
Keicoさんはオーストラリアフレーザー島でのヨガ・リトリートで、ヨガや瞑想を通じて自身の心を見つめた。すると今まで抑えこんでいた感情が溢れてきて、涙が止まらなくなったと言う。
彼女は特殊な家庭環境でも腐らずに頑張ってきた。ブライダルスタイリストも、ヨガインストラクターも自身の努力と、諦めない粘り強さで目標を現実に変えてきた。その強さと引き換えに、“悲しい”、“寂しい”、“誰かに頼る”、“甘える”という感情に無意識にフタをしてきた。力強く前に進んでいくにはそうするしかなかった。彼女は、長年泣くことができなかったのだ。遠いオーストラリアの地でKeicoさんの涙が、時を経て堰を切ったようにとめどなく溢れた。
たくさん泣いたあとに、彼女の中に生まれた感情は「感謝だった」と言う。
「これまで出会った人、経験のひとつひとつがあり、今のわたしをカタチづくっている。楽しいことばかりじゃなく、苦しいことも、そのどれもが欠けてはならない出来事だったと体の底から感じたんですよね。関わってくれた人、走り続けた自分自身に『ありがとう』って抱きしめたい、そんな気持ちでした」と語ってくれた。
今まで関わった人の顔が走馬灯のように浮かんだと言う。もちろん両親もだ。わかりやすい形ではなかったかも知れないけれど、母親も父親もKeicoさんのことを彼女なりに、彼なりに愛していたのだ、とそのときわかった。
「そもそもお母さんのお腹の中にわたしが来て、この世界に産まれてこなければすべては始まっていないし、産んでくれたこと、育ててくれたことを思うと……やっぱり感謝しかないですよね」と、Keicoさんは目を潤ませ声を震わせた。その顔はとても美しかった。
その後、少しずつ両親との関係もやわらかく変化し現在は良好な関係を築いていると言う。
ヨガ哲学で、わたしたち人間は5つの層によって構成されているという考えがある。最も外側の1つ目の層は食べ物、2つ目が呼吸、3つ目がマインド、4つ目が知恵と認識。そして、最奥の5つ目の層は歓喜だとされている。
わたしたちを人間たらしめているものは、食べたもので体が作られること、呼吸ができること、思考し知性を働かせること。4つ目まではすぐに理解できる。ただ5つ目の歓喜は、人によっては「どうかな?」と首を傾げたくなるだろう。生まれたばかりの赤ちゃんを思い出してほしい。赤ちゃんは、お腹が満たされていて安心できる場であれば、いつだって生きることは喜びだということを本能的に知っている。大人になるとこの感覚が麻痺し鈍感になる。
Keicoさんは、彼女の内側の深いところに沈めていた感情をも受容した。まるごとの「わたし」で生きると前を見据えたとき、人間の真ん中には愛、喜びがあることを体感した。
今、彼女の心の庭にはあたたかい太陽の光が差し込んでいる。マインドは雨を降らすこともある。けれど雨や嵐の日でも、雲の上には太陽が存在していることを彼女はよく知っているのだ。KeicoさんのスタジオYoga Biyoriで彼女と空間をともにすれば、言葉に出さずともそのことを教えてくれる。
Keicoさんはヨガのポーズや解剖学、ヨガ哲学の知識を有しているだけでない。「ヨガとは何か?」という大いなる問いに彼女自身の体験がある。生き様そのものがヨガなのだ。
Keico
経絡エアリアルヨガインストラクター/ 数秘鑑定士
ヨガ指導歴は15年を過ぎ、これまで1500名以上にヨガのレッスンを届けてきた。大阪府の箕面市でエアリアルヨガスタジオYoga Biyoriを運営している。
【Information】Litlink / Instagram
Keicoさんが運営する大阪府の箕面市でエアリアルヨガスタジオYoga Biyoriはこちら
後編では、Keicoさんが伝えているエアリアルヨガとの出会いや、大切にしているお客様への想い、これからチャレンジしたいことを伺います。後編もどうぞお楽しみください。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。(執筆者:江川ともよ)
\ご縁を繋ぐきっかけに/
あなたの魅力を伝え、想いを大切に届けるインタビューライティング
監査法人・コンサルティングファームのシェアードサービス会社の人事など会社員経験12年を経て、フリーのライターへ。1000件以上の対話経験を活かし、インタビューライターの活動を開始。
ヨガ講師、2児の母としての顔も持つ。
あなたのすてきなところを言葉にして届けます。
コメント